症例よもやま話

かとう動物病院の症例ブログです

猫の動脈血栓塞栓症(肥大型心筋症)

猫の肥大型心筋症に伴う動脈血栓塞栓症の症例です。

今回は、血栓塞栓から24時間以上経過しており

後肢の壊死が進行してましたが、

カテーテルによる血栓除去を試みました。

 

問題は、

 

①塞栓してからの時間がある程度経過していること

②肺水腫を併発していること

③再灌流障害の危険(慢性腎不全あり)

④FIV陽性

 

でした。

 

下写真は術後のパッドの様子です。

指先のパッドは紫に変色しており、硬化しています。

壊死がある程度進んでいるのがわかります。

術後3日目のパッド

 

さらに1週間経過すると

壊死が進行している黒いパッドと血流が回復してピンク色になったパッド

がはっきりしてきました。

術後10日目

結局色の悪い1本は壊死が進行したため断指しましたが、

断脚は免れましたし、

時間経過に伴い、神経も回復し歩行もできるようになりました。

 

術後3週間目

猫の肥大型心筋症による血栓症

退院できる割合は30~70%。

退院後の余命は2~6ヶ月。

とても厳しい病気ですね。

 

肺水腫、慢性腎不全、再灌流障害の危険など

リスクは山ほどありましたが、

無事に普通の生活を取り戻すことができました。

さらに嬉しいことに退院してから半年が過ぎました。

なかなかここまで上手くはいきませんが、とても勉強になった症例でした。

 

 

 

猫のリンパ腫①

症例の紹介です。

12才の雑種猫。FIV(-) / FeLV(-)

口内炎が治らないとのことで来院されました。

口腔内を観察すると、右側の口峡部あたりが腫れています。

病変は片側性。

歯石はありますが、歯肉炎はそこまでひどくないようです。

 

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病理検査の結果はリンパ腫(低分化型)でした。

病変は限局的なため、放射線療法と抗がん剤治療を組み合わせました。

 

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治療後

治療開始から1ヶ月で完全寛解

その後1年、完全完解キープです。

 

 

猫の口腔疾患と猫のリンパ腫。

これについてはまた少しずつお話できたらと思います。